各話についてのちょっとしたコメントです。
少なからずネタバレを含みますので、ご注意下さいませ。

++序章〜四章++  ++挿話コメント++

五章 邂逅する戦場
波乱の予兆  五章準備段階の回。ここから区切りとして第二部的な扱いになります。
 シーザによるさっそくの進路確認。オーブと神々、それにオーブの所在地など、今後に繋がる情報が出てきています。原作と照らし合わせると色々引っかかる点があると思いますが、ほぼゲーム通りになると思います。
 魔法についてさらに細かい説明。設定なんかどうでもいいよ! という方もおられるかもしれませんが、出さないと気がすまないんです(苦笑)。なるべく退屈にならないよう配慮したつもりですが……。

 平坦な表情。冷たい瞳。どこか酷似した二人の睨み合い。
「最近、軍の動きが活発なようだが、どういうつもりだ?」
 それはシーザが王になったこの十日間で感じたことだった。この平和ボケした国風に反し、ロマリア軍は不穏な動きを見せている。まるで戦支度のように、だ。魔物が氾濫する世とはいえ、楽観視できるものではなかった。
 問いに大臣は無表情できびすを返し、
「貴方には関係の無いことです」
 それだけ告げて、今度こそ去っていった。
核心の確信  問題提起と解決策明示の回。まだ半分も書いていない内から言うのもなんですが、五章は1〜5まで、ストーリーとしてなかなかにまとまっているように思います。ただテンポが悪いですね。説明文も多いですし。
 もともと五章2は『邂逅〜傍観者〜』として書いていたのですが、文量があまりに膨らみすぎたため2と3に分割しました。個々のキャラクターの持ち味を出しつつ無駄なくストーリーを展開させるというのは、やはり難しいです。「まだまだだね」と言われてしまいそうです。
 シーザに触発されて、イクスの内面がちらほらと。触り程度ですが、無いよりマシですかね。

「世界は個人の集合だ。世界を平和にするとは、あまねく個人を救済することに他ならない。俺にそんなことはできない」
 シーザは平坦な声で、しかしどこか自嘲気味に言った。
「バラモスを倒したとて、世界が平和になるわけじゃない。個に全は変えられない。俺に出来るのはきっかけを作ることだけだ」
邂逅〜傍観者〜  事態展開と急進、傍観者登場の回。執筆に二ヶ月を要したという冗談にならない裏事情があったりしますが、文量も最大です。前話のように分割してもなお長いくらいですが、開き直りました。はい。
 この章で事態が急展開してます。文と文の間であっさりと数日を経過してたりします。あんまり好きな手法じゃないのですが、説明しなければならない事項が多すぎたため、採用しました。上記のコメントと矛盾しますが、五章、あんまりまとめきれてないようです。完全に目測を誤ってます。既に反省点だらけですが、今更なので、今はともかく前進する心積もりです。

「君が今回のコリドラスか」
邂逅〜洞窟の中の二人〜  新キャラ二人組登場&退場の回。前話のシリアスから一転、コメディ色が強くなります。会話文もすこぶる多く、書いてて楽しかったです(笑)。
 最初から最後まで商人リプレの視点だったので、もしかしたら戸惑った方もおられるかもしれませんね。違和感無いようにしたつもりなのですが、どうだったんでしょうか?
 個人的にリプレが予想よりも良い感じになって満足(何)。

「遺書、か」
 少女から受け取った手紙を、少年はちらっと一瞥してすぐ返した。彼の面に変化は見られなかったが、
「くだらない……」
 吐き捨てるようなそのセリフが、妙にリプレの印象に残った。
邂逅〜仇敵〜  仇敵登場、決戦と収束の回。長かった五章もこれにて終局となります。
 五章全般を通して、もうどこもかしこも反省点だらけでUPするのにためらわれるくらいでしたが、それはその分学んだことも多かったということで自己完結しました。次回以降の課題としておきます。
 計算してみれば、五章は約250枚分。無駄なく簡潔に、かつ内容深く素早くまとめる、今後の重要課題です。
 アラストルは一応まったくのオリジナルではなく、序章でも触れた、SFCのDQ3オープニングに出てくる黒い魔物を元にしてます。DQ3はボスが少ないので、こんなところからキャラを持ってきてみましたという感じです(何)。
 五章で新キャラクターが四名登場しましたが、彼らは今後のストーリーに深く浅く関わってくる予定です。先を書くのが楽しみです。

 異形――体格こそ人間に近いが、それは例えるなら、神話に出てくる悪魔そのものだった。全身を黒光りする肌で包み、頭には禍々しい二本の角。両手の爪は一本一本が短刀ダガーのように鋭く、長い。唯一人間の時と変わらないのは、不気味な光を放つ金色の瞳。
 魔族は背の、巨大な蝙蝠のような翼を広げると、一打ちで空中へ舞い上がる。
「見事だ、勇者シーザ」
 天空から、しかし地獄の底から這い出てくるような声が、降り注ぐ。
五章外伝 愛と傷痕
傷痕の記憶  外伝は基本的に物語の流れからは外れつつも、かなり重要な話になることが多いです。というわけでアリアの過去話編。
 カンダタ戦に続いてのピンチです。でも今回はバトル主体ではないので、描写はわりとあっさり風味。もう少し緊迫感を演出できると、いいなぁ(願望)。
 ちなみにアリアのあれのことは、伏線を張り忘れてたので唐突に思われるでしょうが、一応最初からの設定です。

 アリアは泣いていた。消えていく光に、失われていく温もりに、ただ泣いていた。
 光が消える直前、自分の名前を呼んだような気がした。
愛の御柱  信仰の象徴。自らの信念の柱とするもの。そういう意味合いとして御柱と名付けました。
 何度書き直しても、改めて、自分は心理描写、心象表現というものが苦手なのだなぁと思い知らされます。でも現状での最高のものを出すしかないですよね。現段階の実力ではこれが限界なのだと思います。
 アリアの過去話がそれぞれに与える影響というのは、思いの他大きいようです。いやあ、すごいなぁ(他人事のように)。

 “愛”という言葉を父は日常的に使った。ほめる時、眠りにつく時、父はアリアの頭を撫でて、愛してるよ、そう言った。
「“あい”ってなあに?」
 その問に対する父の回答は、決まってこうだった。
「頭を撫でてあげることだよ」
 それじゃ分からない、とふくれるアリアを、大きくなれば分かると母がなだめた。

 そんな両親が亡くなったのは、アリアが七歳の頃だった。
六章 砂の果ての再会
再会〜砂漠の商人〜  ようやくアッサラームからイシスまで渡りました。
 アッサラームは、別の場面で登場予定なので今回はあっさりと通過。一気にイシスまで飛びます。五章で登場した新キャラが早々に怪しく再登場。話が動かしやすくなりそうです。
 今回は六章の導入部分なので、盛り上がりに欠けますね。次回に期待ということで。

「余興さ、ただの」
 自然、口元がつり上がる。
「勇者が半ばで倒れようが、生きてネクロゴンドに辿りつこうが、どっちでもいい。どちらに転ぼうが我々の目的は達せられる。ただ早いか遅いかの違いだ。私は――」
「ただ状況を楽しめればいい、かい?」
 薄笑いに、嘲笑を返す。
「そうだ。貴様と同じよ」
再会〜遺跡の中の二人〜  ピラミッド探索編。ゲーム中では別にボスも何もいないので、数の勝負となりました。五章外伝でも同じことやってますね。シーザ無双状態。主人公が無敵設定だと後で困るという良い例ですね!
 盗賊&商人コンビ再登場の巻。前回の反省を踏まえて、今回はビットとイクスの両視点を交互に進む形となりました。しかし、書いた後で思いましたが、こういう手法は時間軸を統一しないとテンポ悪くなりますね。
 イクスが良い感じに駄目になってきてて良い感じです(日本語おかしい)。次回でようやく彼の話が書けるので楽しみですね。

「ピラミッドへ、オレは来た!」
 降り注ぐ灼熱に負けじと声を張る。ただただ暑いだけだったこの砂漠も、今はその熱気が自分達を鼓舞してくれているようだった。
「オレは来た! ピラミッドへ!」
「うるさい。黙れ。馬鹿」
再会〜変われぬ者〜  イクス、女王様にいじめられるの巻。
 ひとまずイクス編は終了です。ようやく少しだけ明かされることができたイクスの過去と現在の話。イクスってこんな奴だったんだと、書きながら気づいた部分も多数ありました。
 書いていて気づくのは、登場人物を掘り下げていくと、いつの間にか自身の悩み苦しみを投影していることです。シーザも、アリアも、グラフトも、もちろんイクスも。みんな悩み多き人生を送っているのですね……(何)。
 あと、女王がなかなか良い味出たのではないかと自己満足してます。

「は、はは……」
 無様だ。
 脱力して、イクスは腰を落とした。
 壁に背を預けて、目元を隠すように髪をかき上げる。
「仰る通り、ですよ。はは、自分でも自覚していたつもりなんですけどね。ここまで急所を的確にぶッ刺されると、キツイなぁ……」
七章 故郷で待つもの
衝撃と告白  グラフト、人生最大の衝撃の巻。
 双伝を書き始めの当初から、とってもとっても書きたかった回です。何年越しかの悲願達成! 喜びもひとしおです。
 前章がイクス掘り下げの回。今章はグラフトの番です。ようやく彼も地金を表したというか、書いていて、こいつこんなにいじられキャラだったんだなぁと気づきました。
 今回、ようやくちゃんとしたプロットを立てて書くことができました。今まで面倒くさがって、頭の中で作った流れを一から順に書いていましたが、きちんとプロットを立てるとこんなにも複線張りが楽になるんだと今さらながらに知りました。

 戦慄と共に確信する。自分は今、人生で最大の危機を迎えていると。


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